2017年02月08日

りんご農家には未来がある!

先日、神田で行われた津軽のりんご農家のリアルというイベントに参加してきました。
https://www.facebook.com/events/1791167287819919/

青森県弘前市には約5千軒のリンゴ農家さんがいらっしゃり、日本のりんごの約2割を作っているそう。しかしながら、高齢化が進み、だいたい半数で後継者がいないというリアル。

りんご農家がりんごを作らなくなるとどうなるか。それまでその人がりんごを作っていた分の収入が、個人的にも、また地域からも無くなってしまうということ。

りんご農家を辞める

収入が無くなり、買い物も減る

買い物をしていたお店の収入が減る

お店がやっていけなくなり、閉店に追い込まれていく

雇用される人も減り、失業者が増える

万引きなど犯罪が増え、治安も悪化

町が成り立たなくなる

という構図のようだ。

結局のところ、後継者がいないというのは、収入が低いからということに突き詰められると思います。

リンゴ農家の収入は10アールあたり約50万円くらいだということです。

農業協同組合新聞の記事にJAつがる弘前の代表理事組合長のインタビューがあります。その中で「平均すると一戸あたり1.3〜1.7haほどの耕作地を夫婦2人でやって、いい時で年収350万、悪いときは150万円ぐらいというのが管内の平均的モデル農家の現状だ」という発言がありました。
http://www.jacom.or.jp/archive03/series/shir173/2010/shir173101004-11115.html

年収ラボによると、青森県の平成25年の平均年収は352万円。
http://nensyu-labo.com/ken_aomori.htm

高齢になってきたという農家さんも、始めは他に仕事がなかったとか、親のりんご農園を継いだとか、それぞれ事情があってりんご農家になったのだと思います。それが時代と共に社会状況が変わり、他に収入のいい仕事があったり、都会に出たりして、あえて収入の少ないりんご農家にならなくてもよくなったということなのだと思います。

「本当は継いでほしいんだけど、収入が少なくて苦労するから、子供たちはいい大学に行って、いい会社に入って、安定した生活してほしい」という親心なのだと思います。


じゃあいったいどうするのか。

これは決して農家さんがもっとがんばって、作る量を増やせば収入も増えるといった、個人の問題ではないと思うのです。

「リンゴは値段が高かろうが安かろうが、生産コストも手間も変わらない、省力化ができない作物だ。2haのリンゴを育てるのに必要な労働力はだいたい2.58人ぐらいなので、それが家族労働の限界規模になる」
もう限界なのだと先ほどのインタビューの中でおっしゃっています。

これまでは、「おいしいりんごを作ることにやりがいを感じてもらって、収入の低いことには目をつぶってください」というシステムだったのだと思います。
その古いシステムに若い人がついていけなくなったということ。
個人の問題ではなく、システムの問題だと思います。

私は、りんごを作りたいなら「個人経営のりんご農家」になるというシステムだけでは、足りないと思っています。

りんごを作りたいと思っている若い人は少なからずいると思うのですが、果たしてその人たちがみんな「経営者」になりたいかといえば、そうではないと思うのです。
給料をもらってりんごを作る「サラリーマンりんご農家」がいてもいいと思うんですね。

その日のイベントで話した人は「黒船が来ないと無理」だとおっしゃっいました。

地域的なこともあるでしょうし、これまでずっとやってきたシステムもありますから、急にすべてを変えるなんてのは無理な話です。

個人経営だと、軽トラや農業機械、資材など全部自分で買わなければならない。農協を通じて購入するそれらが、負担になっているという話も聞きます。

もうやめてしまう農家さんの土地を引き受ける「誰か」。
その「誰か」が働く人を派遣してりんごを作る。
働く人には研修を行い、能力を向上させる。
できたりんごを営業が独自で開拓した市場や個人で売る。
また、自社工場で加工品を製造し、販売する。

その「誰か」は個人なのか、会社なのか、団体なのか、何が最適なのかはわかりません。
きっと今は、事業者ごとにそれぞれの分野で連携して行われていると思いますが、それがさらに強化されるといいのかなと思います。

たとえば農業高校を卒業したら、そこに就職して、何年かりんご栽培の修行をしながら、若い感性で商品開発も行ったり、広報活動や、首都圏での売り込みなどもするといったシステムができればいいと思う。

サントリーは、ワイン用のブドウを自分達で生産しているそうです。
http://www.suntory.co.jp/wine/nihon/kodawari/

ちなみにその場で出された「弘前シードル工房kimori」のシードルはおいしかったです!
りんご農家さんが自らの手で、りんご畑の中で作ったシードルです。
http://kimori-cidre.com/

そんなイメージで、原料の生産から商品開発、販売までを行うのが理想ですよね。
言うのは簡単ですけど、実際にやるのはものすごく大変だと思います。



2015年10月発行の中央農業総合研究センター研究資料 第10号の中に「第15章 津軽地域における大規模リンゴ作経営の成立構造と技術的課題」という非常に興味深い資料がありました。
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/files/narcshiryo-10-02-15.pdf

大規模経営は容易ではなく、大規模化しても労働力不足により管理が難しく、生産性や収益が下がることが一般的だと書かれています。しかしながら、中には13.5haという大規模リンゴ園で収益性も高くすることに成功している人の事例も紹介されています。

実際に行っている人がいるのだから、決して無理な話ではないと思うのです。
結局は政治のリーダーシップになってくるのかもしれませんが、可能性は十分にあると思います。
posted by 伊藤圭 at 13:35| 青森のおはなし